JJ's Bar、今週のエピソードは「スティーヴン、郵便配達員」(ゲスト:菅野秀之さん)です。
今回のエピソードについては、菅野さんをゲストに呼ぶと決めた段階で彼に合いそうな役を考えながら書いたお話です。それに加えて、物語の舞台である「寂れた町」からずっと出ていない人物と、新参者のJJの対比を試みた回でもあります。
菅野さんはラジオ番組のパーソナリティーであったり、語り手として数々のイベントに出演されていたりする方なので、演技するというよりは自然体で喋ってもらおうという感じで「スティーヴン」をお願いしました。演技が本分の方でない人に出演してもらうこと自体はかなり冒険ではありますが、今後の出演者の幅を広げる前例を作る点ではとても重要なことです。この作品、普通の人間だらけの物語ということもあって、企画者としては出演者全員が声優さんっぽい演技である必要はないと思っています。ですので、今回菅野さんに出演していただいて登場するキャラクターの幅を広げることができたかなと。それに加えて彼は顔が広いので、色んな方にこの作品が届くことも期待しつつ(笑)。早速、ご友人の方が聞いて下さったようで、こちらとしては「してやったり」です…!
エピソードの内容については、事前に話の方向をあまり決めずにつらつら書いたわりには、うまく収まったなあと。とはいえ、ずっと故郷を出ていない人物を書くことは、すでに故郷を離れてしまった私にとっては色々と思う事がありました。
私の故郷は「寂れた町」よりは規模は大きいものの、大部分は自然に囲まれているような場所にあります。「スティーヴン」のように一度も地元を出ていない同級生はたくさんいるし、一度は離れた人も結構な確率で戻っていて、住みやすいイメージからか他所から移住してくる人も結構いるという不思議と人を引き寄せる場所です。景色の良さもあって映画のロケ地にもよく使われています。それでも、私が住んでいた当時も今も、一生そこに住みたいとは全然思えないんですが(なんてったって年中寒いし、人間関係が狭いし、ろくな仕事がないので)、何故かそこにずっと住んでいる人って幸せそうに見えるんですよね。それがどうしてなのか、その答えを自分なりに探して「スティーヴン」の人物像を作りあげました。彼は彼で、地元の人に愛されているにも関わらず、外に出なかったことで自分の他の可能性を潰してしまったのではないかと悩んでいたわけですが。
一方、JJは「同じ場所でずっと暮らせるのは羨ましい」と語ります。このセリフが暗示するように、彼には各地を転々としていた過去があり、それは決して望んだものではなかったわけです。自分の居たい場所から離れざるを得なかった側のJJとしては、スティーヴンの立場が恵まれて見えるのも無理はありません。風来坊のJJがこの「寂れた町」に5年も住んでいることも、彼の過去と今後を示唆するキーワードになっていくはずです。
今回は「ずっと故郷で暮らしている人物」が登場しましたが、いずれ自分と同じ「故郷を離れた人物」も出したいと考えています。この企画、発足当初はストーリーやキャラクターは重要ではなく、ただ出演者の良い声を聴いてもらおうという主旨で始めたのですが、今となっては色々な人物を描いてみたいという欲が膨らんできています。シーズン1の残りのエピソードも様々なキャラクターが登場しますので、どうぞ次回もお楽しみに!